養蜂とは?仕事の内容、養蜂家のなり方や年収は?
養蜂の歴史や、養蜂家の仕事内容や、養蜂産業の現状等について紹介します。おまけに気になる養蜂家の年収も。最近、人気が高まっている趣味の養蜂についても紹介します。
養蜂とは
養蜂とは、ハチミツ、ローヤルゼリー、プロポリス、蜜蝋(みつろう)などを採取するためにミツバチを飼育することです。
ハチミツは誰もが知っている食品で、パンに塗ったりして食べる他、飲み物やスイーツの材料にも使われます。
ローヤルゼリー、プロポリスは健康食品として広く知られています。
養蜂とは、ミツバチを飼育し、群れを増やし、このようなミツバチからの贈り物をいただくことです。
でも、それだけではありません。ミツバチは農作物の花粉媒介に大活躍しています。
ミツバチを受粉のために必要とする野菜、果物は大変多く、イチゴやアーモンドなどがあります。
2000年代半ば頃から世界的にミツバチの不足が問題になっています。これは、ミツバチがいなくなると世界全体に与える農作物の受粉への影響が大きいためです。
養蜂は単にハチミツやローヤルゼリーを作るだけではなく、農業全体への貢献も大きいのです。
養蜂家の仕事は?
簡単に言うと、養蜂家の仕事は、ミツバチを飼育し、花の蜜を集め、ハチミツ等を作り出すことです。
ハチミツ農家と言われることがありますが、養蜂家がより正確でしょう。ちなみに、養蜂は畜産の1つです。
巣箱1つ1つ大変重く、機械化にも限界があるので、重労働です。
他にも、ミツバチを増やして販売したり、イチゴ農家などに受粉用のミツバチをレンタルすることも重要な仕事です。
一切ハチミツを作らなくても、立派な養蜂家と言えます。
また、ミツバチプロジェクトなど、世間のミツバチ・養蜂についての関心の高まりから、養蜂インストラクターなどの活動をされている方もおられます。
ハニーハンターから始まった養蜂の歴史
養蜂やハチミツと人類の歴史は古く、世界各地の壁画や文献にハチミツについての記述が残されています。
ヨーロッパやアフリカ、アジアなど、そして、日本、世界の多くの地域には野生のミツバチが生息していました。
野生の巣を破壊してハチミツを採取する、まさに狩猟によってハチミツを採取していたようです。
甘味料がほとんどなかった時代に、ハチミツは大変貴重なものとして扱われたことでしょう。
ハチミツは水を加えると簡単に発酵し、お酒になります。ハチミツは世界最古のお酒とも言われています。
また、エジプトでは死体をミイラにする際に保存のためにハチミツやプロポリスが使われていたということが有名です。
野生の巣を模した原始的な巣箱による養蜂の開始
ミツバチは狭い空間に巣を作る性質があるため、これを利用した巣箱が開発されました。
巣箱といっても大変シンプルなものです。丸太をくり抜いた巣箱が世界中で広く使われていたようです。ミツバチが山の中の木の中に巣を作るのを見て、再現したのでしょう。
丸太の巣箱は、日本でも長野県や和歌山県の南部、対馬などで今も残っています。また、先日ラオスから訪問された方々は今も丸太をくり抜いた巣箱を使われていました。
原始的な巣箱は、丸太以外にもあります。ヨーロッパでは藁製の巣箱が使われていたそうで、軽くて持ち運びに適するという理由からのようです。
また、2018年に視察に訪れたスリランカでは、陶器の壺の巣箱を見ました。
これらの巣箱での飼育方法は、巣箱内にミツバチに巣を作らせ、ハチミツが貯まった後にミツバチを追い出して巣を丸ごと壊してハチミツを採るという方法です。
狩猟の延長のような方法ですが、このような原始的な方法が19世紀半ばまで続きました。
19世紀半ば 養蜂に起こった革命
19世紀半ばになってようやく革命的な養蜂技術の進化が起こりました。
それが、よくテレビなどでもお馴染みの、引き出せるタイプの巣箱です。ラングストロス巣箱や、巣枠式巣箱と呼ばれています。
巣を壊さずに遠心分離機で巣を採取できること、人工的に群れの数を増やしやすいこと、優れた性質を持つ群れの選抜が行えることなど、これまでのミツバチのありのままの飼育と比べて飛躍的に発展しました。
オーストラリアなど元々ミツバチが生息していなかった地域にも持ち込まれ、世界中の広い範囲で養蜂が行われています。
日本の養蜂の転換点 セイヨウミツバチの導入
日本では、野生のニホンミツバチが生息しています。
日本養蜂協会によると、奈良時代にはハチミツが献上されたという記述もあるようです。
しかし、明治に入るまでは養蜂はあまり活発に行われておらず、当時は液体の輸送も難しかったことから、ハチミツは滅多に口に入らない食品であったと想像されます。
大きな転換点となったのが、明治に入ってすぐの海外からセイヨウミツバチが導入です。
セイヨウミツバチはニホンミツバチよりもハチミツをたくさん集める性質があります。
また、海外の優れた養蜂技術(巣枠式巣箱)と一緒に輸入されたことが大きなポイントとなりました。
結果、産業としての養蜂はすべてセイヨウミツバチで行われるようになりました。
このホームページで紹介しているニホンミツバチは、残念ながら養蜂家からは相手にされず、一部の地域で趣味や自家消費用に細々と飼育されていたようです。
セイヨウミツバチとニホンミツバチの違いについては次のページをご覧ください。
日本ではニホンミツバチとセイヨウミツバチの2種類のミツバチがいます。同じミツバチですがその性質や飼育方法は異なります。両方を飼育している養蜂家は多くありません。
2000年代以降のニホンミツバチの人気の向上
私たちが本格的にニホンミツバチの養蜂を始めたのは90年代後半です。
昭和60年頃に始められた方によると、当初はニホンミツバチに関する書籍が全くなく、セイヨウミツバチに関する書籍にわずか数ページで紹介されているものしか見つからなかったそうです。
このため、つい最近までは、ニホンミツバチの飼育方法を知ること自体が難しいく、地域で伝承されるようなものでした。
2000年代に入ると、趣味でニホンミツバチを飼育する人が増加しているようです。
理由としては以下があると考えています。
- 鉄腕ダッシュなどのテレビ番組でニホンミツバチの飼育方法が紹介された
- ニホンミツバチ関する書籍が複数出版された
- インターネットで飼育情報を得られるようになった
- ミツバチの減少が報じられたことで、養蜂への関心が高まった
日本にはどのくらいの数の養蜂家がいる?プロの養蜂家はおおよそ6000戸数
まず、事業としての養蜂を行う人、つまりプロの養蜂家はどのくらいいるのでしょうか? おおよそ6,000戸数と考えられます。
これについては国の統計があります。 養蜂をめぐる情勢(平成29年10月)| 農林水産省
平成24年度まではプロの養蜂家のみ届け出をするルールでした。平成25年からは趣味の養蜂家も原則届け出が必要になったので増えていますが、プロの養蜂家は大きく増えていることはないでしょう。
統計ではニホンミツバチ、セイヨウミツバチは区別されていませんが、プロの養蜂家のほとんどはセイヨウミツバチで養蜂を行なっています。
日本では、海外からの安いハチミツが流入してくること、よいハチミツを採るための自然環境が不足していることから、商業的な養蜂家は年々減少傾向にあります。
農業と同じく、高齢化が進んでおり、50代でも若手というような世界です。
また、1人あたりの飼育群れ数も諸外国と比べると少なく、農家が副業的に行なっている場合が多いようです。
人件費が安い国や、国土が広い国は、ハチミツの生産に有利です。例えば、中国やアルゼンチンはハチミツの生産量が多い国です。
今後も、プロの養蜂家としては厳しい状況が続いていくでしょう。
統計データが存在しない趣味の養蜂家はおよそ数万人?
それでは、趣味の養蜂家はどのくらいいるのでしょうか?
平成25年から趣味の養蜂家も届け出が必要になりました。その後4000人ほど戸数が増えており、この戸数が趣味の養蜂家となるはずですが、これはあまりに少ないです。
制度の改正自体を知らないなどの理由で、届け出を行っていない人が多いと考えられます。
趣味の養蜂の実態はよく分かっておらず、国にもデータがないようです。
サイトのアクセス数や、イベントの来場者数、養蜂器具の販売数などから考えると、実際にはこの何倍もの趣味の飼育者がいると考えられます。
プロの養蜂を行う場合、そのほとんどがセイヨウミツバチの飼育ですが、趣味の世界ではセイヨウミツバチではなく、ニホンミツバチを養蜂する人も一定数います。
ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ合わせて数万人から5万人程度の趣味の養蜂家がいるのではないかと考えています。
養蜂家は儲かる、年収は高い?
プロの養蜂家を考えた場合、年収が高い職業とは言えないでしょう。
日本国内の養蜂業者は家族経営などの零細企業がほとんどです。
農業と同じく、大規模化や工夫によって、儲かる養蜂を実現されている方もいると思いますが、基本的には厳しい状況です。
元々ある土地を利用して副業として収入を得たり、イチゴなどのミツバチによる受粉が必要な農家がミツバチを自分で飼育してハチミツも生産するような形が適していると思います。
ハチミツは保存が効きますし、重量当たりの単価も他の農作物と比べると高いので、海外産との競争がどうしても激しくなります。
また、最近では農薬で大きな被害を受ける場合もあり、業として行う場合は大きなリスクとなります。
ハチミツの生産を目的とした養蜂を行うのは、相当な覚悟が必要です。
養蜂家になるには?
それでも養蜂家になって食っていきたいという人もいると思います。
ただ、養蜂家への道はなかなか厳しいです。
まず、国内のハチミツの生産量は非常に低く、平成28年はわずか5.4%の自給率です。(養蜂をめぐる情勢(平成29年10月)| 農林水産省 より)
産業としての養蜂の規模は非常に小さいと言えます。このため、養蜂場で働こうと思っても、求人はなかなかありません。
それでは新規の養蜂家として起業するのはどうでしょうか?
農業や畜産などと比べると、養蜂の初期コストはそこまで高くありません。養蜂には100万円以上もするような高い機械は必要ないですし、建物を建てる必要もありません。
しかし、良い場所がすでに先輩養蜂家に抑えられていることや、一から販路を開拓することを考えると大変だと言えます。
これから始める場合養蜂だけで生計を立てるのは現実的でないため、養蜂をしたいのであれば、他の収入源を持ちながら副業で始めるべきという意見をよく目にします。
"趣味"の養蜂家になるには?個人での趣味の養蜂は可能?
プロの養蜂家になりたい人に会うことはあまりありませんが、個人で趣味で、庭先で養蜂したいという人は増えていると感じています。
個人で養蜂することは十分に可能です。最近では趣味で、個人で飼育する人も増えています。
養蜂には、土地は意外と必要ありません。田舎に住んでいて、庭があればそこに巣箱を置くことができます。
また、何十万円もするような効果な機械や道具は必要なく、初期費用もそれほど高くありません。エサも必須ではありませんので、維持費用も意外と低いです。
そして、ハチミツも採れます。家庭菜園やペットの飼育などの趣味と比べてもお金が特にかかるということはないのです。
日本では商業的な養蜂は厳しい現状ですが、個人の趣味養蜂はまだまだ広がる余地があります。
最近では、都市部で養蜂を行うミツバチプロジェクトが各地で行われていますし、鉄腕DASHのDASH村や、金スマのひとり農業でニホンミツバチの養蜂が取り上げられたりしています。
日本だけでなく、欧米の先進国では安い輸入ハチミツに押されて養蜂産業は衰退していますが、趣味の養蜂、特に、最近では都市部で屋上で養蜂する活動なども多くの都市でみられます。
私たちは趣味の養蜂家です。プロの養蜂家になって生計を立てて行くのは大変だと思いますが、趣味の養蜂家になるのは、多くの人が思っているほど難しいことではないと思います。
アメリカやEUの統計を見ると、安いハチミツが海外から流入して来ることで国内の養蜂産業が衰退していること、また、ミツバチへの関心の高まりから趣味の養蜂家が増えるというのは、先進国で共通して言える現象です
個人・趣味の養蜂家の資格や許可は?
個人で養蜂を始める場合、特に資格や許可は必要ありません。
自治体を通して国に届け出る必要がありますが、趣味で飼育するだけなら許可が降りないということはありません。
大阪府のように、養蜂を行う場所について厳しく条例で定められている場合もあります。
また、当然ですが、養蜂は近所トラブルにつながりやすい行為であるため、迷惑をかけないように十分に注意して行うようにしてください。
次のページを読んでください。
住宅地での養蜂はトラブルにつながります。苦情だけではありません。ニホンミツバチで起こりやすい近所トラブルと防止方法を紹介します。
養蜂って農業?
ミツバチは家畜の一つになります。たまに「蜂蜜農家」と言われることもありますが、実は養蜂は畜産の1つです。
ミツバチが家畜をいう印象を持っていない人は多いですが、分類上はそうなります。西洋蜜蜂は長い間人間に飼育されてきた歴史があり、品種改良もされています。
このため、ミツバチの病気やダニなどの検査は、牛や豚を管轄する家畜保健衛生所の管轄になります。
ニホンミツバチは野生種ですが 人間が飼育すると家畜であると言えます。
個人の趣味の養蜂家なら、ニホンミツバチがおすすめ
日本には、在来種のニホンミツバチと、セイヨウミツバチがいます。
プロの養蜂家でニホンミツバチを飼育する人はおらず、セイヨウミツバチでハチミツが生産されています。
しかし、趣味での飼育では、ニホンミツバチも十分に選択肢に入ってきます。
採れるハチミツの量は少ないですが、野生の群れを捕獲することで安く群れを入手できますし、野生のニホンミツバチを自然に住むのと同じように飼育すれば専門知識の学習が少なくて済むという特徴があります。
ニホンミツバチの飼育の始め方は、次のページをご覧ください。
ニホンミツバチの飼育を始めたい方のために、どのように、いつ準備すれば良いのかや、必要な準備物などを紹介します。週末養蜂家になりたい方はまずはこの記事を読んでください。
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