秋になると、スズメバチがニホンミツバチの巣のまわりにやってくることが多くなります。スズメバチは肉食ですので、働き蜂を捕まえて連れ去ったり、殺したり、巣の中に侵入して幼虫を連れ去ったりします。巣箱に近づいてくるのは、主にキイロスズメバチとオオスズメバチです。
キイロスズメバチへの対策は不要
体はオオスズメバチよりも小さく、巣の前を飛び回ってニホンミツバチの働き蜂を捕まえようとします。ニホンミツバチが威嚇すると、警戒してあまり近づきません。
キイロスズメバチは1匹ずつ地道にニホンミツバチを誘拐していきます。捕まったニホンミツバチは、肉団子にされてキイロスズメバチの餌になります。キイロスズメバチがやってきても、働き蜂が少し減るくらいで、群れ自体にはほとんど影響がありません。
キイロスズメバチは軒下などの高所に巣を作ります。最近、都市部などではキイロスズメバチが増えている地域もあるようです。知らない間に巣に近づいてしまい、人間が襲われる事故も多く発生しています。もっとも身近なスズメバチと言えます。
しかし、キイロスズメバチがニホンミツバチに与える脅威は少ないです。巣箱の外で働いている、高齢の働き蜂が多少犠牲になる程度です。特に対策をする必要はありません。
次の動画では、キイロスズメバチの狩を観察しました。
ニホンミツバチの巣箱の周りを飛んでいるキイロスズメバチは、何もしなければ人間を襲うことはまずありません。
ただ、人間に恐怖感を与えたり、靴や服に偶然入り込んだ事故のような形で刺される可能性はあります。
キイロスズメバチを熱殺蜂球で撃退する
ニホンミツバチは、熱殺蜂球という必殺技を持っています。テレビなどで紹介されるのは、オオスズメバチに対する熱殺蜂球ですが、キイロスズメバチへも見られます。
巣箱の周りにスズメバチの死骸が転がっていることがありますが、これは熱殺蜂球でやられたスズメバチです。
次の動画では、熱殺蜂球の瞬間を捕らえました。(動画中の巣箱に設置している網は、熱殺蜂球の発生頻度が増えますが、捕食されるミツバチも増える印象があります。キイロスズメバチ対策としては有効とは言えません。)
要警戒!群れを全滅させるオオスズメバチ
オオスズメバチは世界最強のスズメバチです。他のスズメバチと比べると、非常に大きく、羽音も低く、重い音がします。この音を聞くと背筋が凍ります。キイロスズメバチとは怖さが全然違います。
ミツバチの巣にやってきたオオスズメバチが人間を襲うことはまずありませんが、ハエ叩きなどで叩き落とす場合は、人間を威嚇し、まれに刺されることもあるので十分に注意してください。
オオスズメバチはニホンミツバチの巣を集団で襲い、巣を占領します。そして、サナギを何日もかけて自分の巣に運んで幼虫の餌にします。
オオスズメバチは幼虫を育てるために大量の餌を必要とするため、ミツバチや、他のスズメバチの巣を集団で襲うことがよくあります。
次の動画は、網で覆う対策を行っていなかったために、オオスズメバチに占領されてしまった開放巣の様子です。
占領されてしまうとニホンミツバチは集団で逃げます。秋には、オオスズメバチに襲われて逃げた群れが巣箱に入ることがあります。
賢く、集団でニホンミツバチを襲うオオスズメバチ
オオスズメバチは、まず1匹で偵察にきます。
狙いを定めるとニホンミツバチの威嚇をもろともせず、巣箱に上陸します。巣箱外での威嚇が無理だと判断すると籠城作戦に移行し、巣から出てこなくなります。
一方、オオスズメバチは、フェロモンを使って他の仲間を呼びます。こうして、集団でニホンミツバチの巣を襲います。巣箱の入り口付近や壁などを歩き回り、中に入れる場所がないか探します。
中に入れなくても、巣の入り口を強力な顎で破壊して侵入しようとします。
秋になるとキイロスズメバチは巣箱の周りを常にやってきますが、オオスズメバチはそう頻繁にはやってきません。
弱い群れから優先的に襲うため、元気な群れにはオオスズメバチがやってこないこともあります。
オオスズメバチ対策のポイント
オオスズメバチ対策のポイントは、「オオスズメバチが巣箱の中に入れないようにすること」です。動画でポイントを紹介していますのでぜひご覧ください。
まず巣門の大きさを、ニホンミツバチは通れても、スズメバチは通れない大きさにします。
基本的に、巣門がオオスズメバチが入れない大きさであれば、オオスズメバチの被害は防ぐことができますが、オオスズメバチは巣門を強力なアゴでかじって広げて侵入を試みるので注意が必要です。
次の写真は、ミツバチQ&Aにオタクの蜂飼い さんが投稿されていた画像で、オオスズメバチにより巣門がかじられた時の様子です。上側をかじっているのが分かります。
今日は裏山に行ってきました。通年待ち箱を設置しているのですが、入り口の気になる巣箱が!!薄い板の巣門であれば、何日もガリガリと削って侵入することがあります。このため、巣門を削れないように、金属を使うことが有効です。
このような万全の体制で、オオスズメバチの侵入を防げれば、ニホンミツバチがオオスズメバチにやられることはありません。
10月下旬になると最高気温が15度までしか上がらなくなると、オオスズメバチの動きも鈍くなり、襲撃もなくなります。
オオスズメバチが極端に多い地域ではわかりませんが、ニホンミツバチの群れが健康であればこれでオオスズメバチの被害はほとんど防げます。
オオスズメバチは養蜂家から見ると憎い存在ですが、生態系の中で重要な役割を担っており、害虫も食べます。なるべく殺さずに共存していきたいものです。
オオスズメバチが特に多い場合におすすめは粘着シート
オオスズメバチが特に多い地域や、自宅前などで飼育していてオオスズメバチが飛び回ると困るときにおすすめなのは粘着シートです。
襲ってくるオオスズメバチを効果的に捕獲することができます。次の動画で実演しています。ぜひご覧ください。
網で守る方法は意外と難しい
オオスズメバチから巣箱を守るために、網で守る方法は意外と難しいです。
まず、網目が大きい網では、オオスズメバチが簡単に入ってきてしまいます。実験した動画がありますので、ぜひご覧ください。
オオスズメバチがやってくると、ニホンミツバチは籠城体制に入るので、通れるサイズの網では意味がありません。
オオスズメバチが通れない網を使う場合でも、防鳥ネットのような樹脂の網では、オオスズメバチが噛んで破ってしまいます。
また、地面との隙間にも気を付けないと、オオスズメバチが地面をうろうろして入り口を見つけてしまいます。
次の動画では、防鳥ネットがあっさりと突破されてしまいました。
オオスズメバチの侵入を遅らせるなどの効果が出る場合がありますが、まずは巣門の対策をしっかりした上で、補足的に試すのが良いです。
週末養蜂では長期間巣箱を放置するためこのような網は使っていませんが、自宅前で飼育される場合などで、頻繁に巣箱を見る場合は、活用できるかもしれません。
自然巣をオオスズメバチから守る方法
ニホンミツバチは、木の中の空洞、民家の床下、天井裏、石垣の中など、いろいろなところに巣を作ります。
野生の巣は出入り口が大きいことも多く、オオスズメバチにやられることが多いです。ニホンミツバチが通れて、オオスズメバチが通れるところがないなんて、完璧な出入り口は自然界にはなかなか存在しません。
オオスズメバチが中に入れないようにすれば、被害をほとんど防ぐことができます。
木の中にできた群れを守るため、金網を取り付けてみました。取り付けた2日後にはオオスズメバチがきていて、あと少し遅ければやられていたかもしれません。
スズメバチの動画をご紹介
他にも、スズメバチに関する動画を公開しています。ぜひお楽しみください。
実は、キイロスズメバチは民家や住宅地にも巣を作るため、最も被害が大きいスズメバチと言われています。 キイロスズメバチの生態について紹介します。
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