秋になると、スズメバチがニホンミツバチの巣箱にやってきます。スズメバチは肉食で、働き蜂を捕まえて連れ去ったり、巣の中に侵入して幼虫を連れ去ったりします。巣箱に近づいてくるのは、主にキイロスズメバチとオオスズメバチです。
スズメバチが活発になる時期
スズメバチは春から秋にかけて活動しますが、ミツバチの巣箱に頻繁にやってくるのは主に秋です。
春から初夏にかけて、女王蜂が単独で巣を作り始めます。この時期のスズメバチはまだ数が少なく、ミツバチの巣を襲うほどの戦力がありません。
夏になると働き蜂の数が増え、巣が大きくなっていきます。8 月頃から次世代の女王蜂や雄蜂を育てるため、タンパク質(肉)の需要が急増します。
9 月〜10 月が最も危険な時期です。この時期にオオスズメバチが集団でミツバチの巣を襲撃することが多くなります。キイロスズメバチも常に巣箱の周りにやってきます。
11 月になり気温が 15 度を下回る日が続くと、スズメバチの活動は急速に衰えます。
スズメバチがミツバチを襲う理由
スズメバチは肉食性の昆虫です。成虫自身は樹液や花の蜜を舐めますが、巣で育てている幼虫にはタンパク質が必要です。
スズメバチは昆虫を捕まえて肉団子にし、巣に持ち帰って幼虫に与えます。ミツバチの巣には数万匹の昆虫が一箇所に集まっているため、効率的に狩りができます。
特にオオスズメバチは、ミツバチの巣を見つけると「ここに餌場がある」と仲間に知らせるフェロモンを出します。これによって集団で襲撃し、巣を占領してサナギや幼虫を根こそぎ持ち去ってしまいます。
キイロスズメバチへの対策は不要
体はオオスズメバチよりも小さく、巣の前を飛び回ってニホンミツバチの働き蜂を捕まえようとします。ニホンミツバチが威嚇すると、警戒してあまり近づきません。
キイロスズメバチは 1 匹ずつ地道にニホンミツバチを誘拐していきます。捕まったニホンミツバチは、肉団子にされてキイロスズメバチの餌になります。キイロスズメバチがやってきても、働き蜂が少し減るくらいで、群れ自体にはほとんど影響がありません。
キイロスズメバチは軒下などの高所に巣を作ります。最近、都市部などではキイロスズメバチが増えている地域もあるようです。知らない間に巣に近づいてしまい、人間が襲われる事故も多く発生しています。もっとも身近なスズメバチと言えます。
しかし、キイロスズメバチがニホンミツバチに与える脅威は少ないです。巣箱の外で働いている、高齢の働き蜂が多少犠牲になる程度です。特に対策をする必要はありません。
次の動画では、キイロスズメバチの狩を観察しました。
ニホンミツバチの巣箱の周りを飛んでいるキイロスズメバチは、何もしなければ人間を襲うことはまずありません。
ただ、人間に恐怖感を与えたり、靴や服に偶然入り込んだ事故のような形で刺される可能性はあります。
キイロスズメバチを熱殺蜂球で撃退する
ニホンミツバチは、熱殺蜂球という必殺技を持っています。テレビなどで紹介されるのは、オオスズメバチに対する熱殺蜂球ですが、キイロスズメバチへも見られます。
巣箱の周りにスズメバチの死骸が転がっていることがありますが、これは熱殺蜂球でやられたスズメバチです。
次の動画では、熱殺蜂球の瞬間を捕らえました。(動画中の巣箱に設置している網は、熱殺蜂球の発生頻度が増えますが、捕食されるミツバチも増える印象があります。キイロスズメバチ対策としては有効とは言えません。)
要警戒!群れを全滅させるオオスズメバチ
オオスズメバチは世界最強のスズメバチです。他のスズメバチと比べると、非常に大きく、羽音も低く、重い音がします。この音を聞くと背筋が凍ります。キイロスズメバチとは怖さが全然違います。
ミツバチの巣にやってきたオオスズメバチが人間を襲うことはまずありませんが、ハエ叩きなどで叩き落とす場合は、人間を威嚇し、まれに刺されることもあるので十分に注意してください。
オオスズメバチはニホンミツバチの巣を集団で襲い、巣を占領します。そして、サナギを何日もかけて自分の巣に運んで幼虫の餌にします。
オオスズメバチは幼虫を育てるために大量の餌を必要とするため、ミツバチや、他のスズメバチの巣を集団で襲うことがよくあります。
次の動画は、網で覆う対策を行っていなかったために、オオスズメバチに占領されてしまった開放巣の様子です。
占領されてしまうとニホンミツバチは集団で逃げます。秋には、オオスズメバチに襲われて逃げた群れが巣箱に入ることがあります。
賢く、集団でニホンミツバチを襲うオオスズメバチ
オオスズメバチは、まず 1 匹で偵察にきます。
狙いを定めるとニホンミツバチの威嚇をもろともせず、巣箱に上陸します。巣箱外での威嚇が無理だと判断すると籠城作戦に移行し、巣から出てこなくなります。
一方、オオスズメバチは、フェロモンを使って他の仲間を呼びます。こうして、集団でニホンミツバチの巣を襲います。巣箱の入り口付近や壁などを歩き回り、中に入れる場所がないか探します。
中に入れなくても、巣の入り口を強力な顎で破壊して侵入しようとします。
秋になるとキイロスズメバチは巣箱の周りを常にやってきますが、オオスズメバチはそう頻繁にはやってきません。
弱い群れから優先的に襲うため、元気な群れにはオオスズメバチがやってこないこともあります。
ニホンミツバチだからこそ生き残れる
実は、セイヨウミツバチはオオスズメバチに対する防衛手段を持っていません。セイヨウミツバチの原産地であるヨーロッパにはオオスズメバチがいなかったため、対抗する術を進化させる必要がなかったのです。
一方、ニホンミツバチは長い年月をかけてオオスズメバチと共存してきました。熱殺蜂球という必殺技や、巣門での威嚇行動など、オオスズメバチに対抗する様々な行動を身につけています。
適切な対策をした巣箱であれば、ニホンミツバチはオオスズメバチから身を守り、生き延びることができます。
オオスズメバチ対策のポイント
オオスズメバチ対策のポイントは、「オオスズメバチが巣箱の中に入れないようにすること」です。動画でポイントを紹介していますのでぜひご覧ください。
まず巣門の大きさを、ニホンミツバチは通れても、スズメバチは通れない大きさにします。
基本的に、巣門がオオスズメバチが入れない大きさであれば、オオスズメバチの被害は防ぐことができますが、オオスズメバチは巣門を強力なアゴでかじって広げて侵入を試みるので注意が必要です。
次の写真は、ミツバチ Q&A にオタクの蜂飼い さんが投稿されていた画像で、オオスズメバチにより巣門がかじられた時の様子です。上側をかじっているのが分かります。

今日は裏山に行ってきました。通年待ち箱を設置しているのですが、入り口の気になる巣箱が!!
薄い板の巣門であれば、何日もガリガリと削って侵入することがあります。このため、巣門を削れないように、金属を使うことが有効です。
このような万全の体制で、オオスズメバチの侵入を防げれば、ニホンミツバチがオオスズメバチにやられることはありません。
私たちはオオスズメバチの侵入を防ぐことができる専用の鉄製台を使用しており、販売も行っています。巣門部分も鉄製になっているため、オオスズメバチが強力なアゴで削ろうとしても歯が立ちません。巣門の高さは 7mm に設定しており、ニホンミツバチは通れてもオオスズメバチは入れないサイズになっています。
秋が深まり最高気温が 15 度程度までしか上がらなくなると、オオスズメバチの動きも鈍くなり、襲撃もなくなります。
ニホンミツバチの群れが健康であればこれでオオスズメバチの被害はほとんど防げます。
オオスズメバチは養蜂家から見ると憎い存在ですが、生態系の中で重要な役割を担っており、害虫も食べます。なるべく殺さずに共存していきたいものです。
春のスズメバチトラップは効果なし
「春に女王蜂を捕まえれば、秋の被害を減らせるのでは」と考える人もいます。市販のスズメバチトラップを春に設置して、巣を作り始める前の女王蜂を捕まえようという作戦です。
しかし、残念ながらこの方法はあまり効果がありません。オオスズメバチの行動範囲は非常に広く、数キロ先から飛んでくることもあります。自分の敷地内でトラップを設置して数匹の女王蜂を捕まえても、周囲にはまだたくさんの女王蜂がいるのです。
「春に女王蜂を 1 匹捕まえれば、1 群れを駆除するのと同じ」と言われることがありますが、これも正確ではありません。オオスズメバチの秋の巣には、新女王蜂が 100 匹程度いるようです。
しかし、実際に巨大な巣を作り上げるのはごく一部の女王蜂であり、女王蜂を捕まえたとしても生息数を減らす効果は期待できません。
また、先ほども述べたように、オオスズメバチは生態系の中で重要な役割を担っています。特にセイヨウミツバチの野生化を防ぐ役割もあるため、ニホンミツバチにとってオオスズメバチがいなくなることがメリットになるとは限りません。
網で守る方法は意外と難しい
オオスズメバチから巣箱を守るために、網で守る方法は意外と難しいです。
まず、網目が大きい網では、オオスズメバチが簡単に入ってきてしまいます。実験した動画がありますので、ぜひご覧ください。
オオスズメバチがやってくると、ニホンミツバチは籠城体制に入るので、通れるサイズの網では意味がありません。
オオスズメバチが通れない網を使う場合でも、防鳥ネットのような樹脂の網では、オオスズメバチが噛んで破ってしまいます。
また、地面との隙間にも気を付けないと、オオスズメバチが地面をうろうろして入り口を見つけてしまいます。
次の動画では、防鳥ネットがあっさりと突破されてしまいました。
オオスズメバチの侵入を遅らせるなどの効果が出る場合がありますが、まずは巣門の対策をしっかりした上で、補足的に試すのが良いです。
週末養蜂では長期間巣箱を放置するためこのような網は使っていませんが、自宅前で飼育される場合などで、頻繁に巣箱を見る場合は、活用できるかもしれません。
自然巣をオオスズメバチから守る方法
ニホンミツバチは、木の中の空洞、民家の床下、天井裏、石垣の中など、いろいろなところに巣を作ります。
野生の巣は出入り口が大きいことも多く、オオスズメバチにやられることが多いです。ニホンミツバチが通れて、オオスズメバチが通れるところがないなんて、完璧な出入り口は自然界にはなかなか存在しません。
オオスズメバチが中に入れないようにすれば、被害をほとんど防ぐことができます。
木の中にできた群れを守るため、金網を取り付けてみました。取り付けた 2 日後にはオオスズメバチがきていて、あと少し遅ければやられていたかもしれません。
スズメバチの動画をご紹介
他にも、スズメバチに関する動画を公開しています。ぜひお楽しみください。
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