Q
なぜニホンミツバチはキンリョウヘンに誘引されるのですか?

養蜂家

キンリョウヘンは蜜も花粉も出さないのに、ニホンミツバチの集合フェロモンに似た物質を発して誘引します。ミツバチは「騙されて」受粉を手伝わされているのです。

蜜も花粉もないのに、なぜかミツバチが夢中になる。  キンリョウヘンは、ニホンミツバチの養蜂で「魔法の花」と呼ばれるほど強力な誘引効果を持っています。春の分蜂シーズンに咲かせると、どこからともなくニホンミツバチが集まってきます。

しかし、その仕組みはとても不思議なものです。

蜜も花粉も出さない花

普通、ミツバチが花を訪れるのは蜜と花粉を集めるためです。花は蜜や花粉を「報酬」として提供し、その代わりに受粉を手伝ってもらいます。お互いにメリットがある関係です。

ところが、キンリョウヘンの花には蜜がありません

キンリョウヘンの研究で著名な菅原道夫氏は著書『ミツバチ学』の中で、キンリョウヘンの花には蜜腺(みつせん)がなく、花からは蜜が出ないと述べています。蜜腺は花の外側、茎の付け根にあるだけです。

さらに、キンリョウヘンの花粉は「花粉塊(かふんかい)」という塊になっていて、ミツバチが脚に付けて持ち帰ることができません。つまり、ミツバチにとってキンリョウヘンは何のメリットもない花なのです。

フェロモンで「騙す」戦略

では、なぜニホンミツバチはキンリョウヘンに集まるのでしょうか?

答えは「フェロモン」です。

キンリョウヘンは、ミツバチの「集合フェロモン」に似た化学物質を発しています。ミツバチは「仲間が集まっている!」と勘違いして花に近づき、その間に体に花粉塊が付着して受粉を手伝わされてしまうのです。

なぜセイヨウミツバチには効かないのか

興味深いことに、キンリョウヘンはセイヨウミツバチにはほとんど効果がありません

これは、ニホンミツバチとセイヨウミツバチで集合フェロモンの成分が異なるためと考えられています。キンリョウヘンが出す物質は、ニホンミツバチのフェロモンに特化して進化したのでしょう。

キンリョウヘンは中国原産のランで、もともと現地に生息するトウヨウミツバチを誘引するように進化したと考えられています。ニホンミツバチはトウヨウミツバチの亜種なので、日本に持ち込まれたキンリョウヘンにも同じように誘引されるのです。

養蜂での活用

この誘引効果がとても高い評価を受けたため、園芸種としてはほとんど人気のないキンリョウヘンは、ニホンミツバチの愛好家にこぞって栽培されるようになりました。  待ち箱のそばにキンリョウヘンの花を置いておくと、新しい巣の場所を探している探索蜂が引き寄せられます。探索蜂がその場所を候補地として持ち帰り、やがて分蜂群の本体がやってきて入居してくれることがあるのです。

キンリョウヘンの誘引成分を人工的に再現した「待ち箱ルアー」という製品もあります。ランの栽培が難しい方や、開花時期を調整できない方に人気です。

関連するFAQ

A
分蜂時期に、巣箱の横に設置します。キンリョウヘンが受粉しないように網をかけます。複数の花芽がある場合は切り花にすると有効活用できます。詳しくは、こちら

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