ニホンミツバチの蜜蝋(ミツロウ)の作り方(精製方法)
養蜂では、ハチミツだけでなく、巣の原材料の蜜蝋(ミツロウ)を採取できます。蜜蝋は食用には用いられませんが、ハンドクリームやロウソクづくりなどに活用することができます。また、ニホンミツバチの誘引に広く使われています。
蜜蝋(ミツロウ)の用途
蜜蝋(ミツロウ)は、その名の通り、蝋(ロウ)です。
蜜蝋(ミツロウ)は、中世ヨーロッパでは教会用のろうそくの原料として用いられました。ロウソクを作るため、教会では養蜂が行われていたそうです。
その後、石油から生成されるロウソクに取って代わったのはご存知の通りですが、蜜蝋ロウソクはススが出にくく、香りも良いため、現在でも愛好家がいます。
あまり馴染みがなく、認知度も低い蜜蝋ですが、実はいろいろと使い道があります。
蜜蝋(ミツロウ)の利用用途として主流なのは、ハンドクリームなどの化粧品の材料や、木材用のワックスの材料です。
お店で売られている製品に蜜蝋が使われていることもありますし、蜜蝋を使ってハンドクリームやリップクリームなどを手作りすることもできます。
実際に、私たちが採取した蜜蝋は、椿みつ朗というスキンケア商品の材料として使っていただいています。
面倒だから蜜蝋は作っていないという人もおられますが、せっかくのミツバチからの贈り物です。有効に活用しましょう。
蜜蝋はニホンミツバチの捕獲に活躍
ニホンミツバチを捕獲するときには、蜜蝋が必要です。
蜜蝋を巣箱に塗っておくことで、ニホンミツバチを誘引できると考えられているためです。
ニホンミツバチの捕獲に必要なのは、ニホンミツバチの蜜蝋です。市販されているものはほぼすべてセイヨウミツバチの蜜蝋です。
手に入りにくいニホンミツバチの蜜蝋を、自分の巣箱に塗るために採取する人が多いです。
ただ、巣箱に塗る用途ではあまり量は必要ではなく、飼育群が増えるにつれて余るようになります。ハンドクリームやロウソク作りにもチャレンジしてみましょう。
蜜蝋は搾かすから取り出す
巣の搾りカスから蜜蝋を作りましょう。蜜蝋の作り方は簡単です。
絞りカスには蜜蝋の他にも、ニホンミツバチの死骸などのゴミが混ざっていますが、お湯の中に絞りカスを入れると、蜜蝋が溶けて浮き上がってくる性質を利用して、蜜蝋を取り出します。
まず、搾りカスを木綿製の袋などに入れて鍋の中に入れます。鍋に水を入れてお湯を沸かすと、水より比重の低い蜜蝋が溶けて水面に浮いてきます。完全に蜜蝋が溶けたところで火を止めて冷やせば、固まって蜜蝋の板ができます。
搾りカスを袋に入れておくことがポイントです。蜜蝋が溶けるとごみは袋の中に残り、蜜蝋だけ浮いてきます。
なお、蜜蝋の融点は65℃程度ですので、お湯を沸騰させる必要はありません。作業はなるべく屋外で行ってください。
搾りカスをお湯で溶かすと異臭がします。屋内だと臭いが充満してしまいます。袋の中に蜜蝋を入れるのではなく、絞りカスをお湯に入れて、溶けてから網を沈めることで、蜜蝋のみ取り出しています。
1回だけでゴミを完全に取り除くことは難しいので、この作業を何度か繰り返して、蜜蝋をきれいにします。
蜜蝋をどの程度まできれいにする必要があるのかは、用途によって異なります。ロウソクにする場合は、多少ゴミが含まれていても大丈夫です。
しかし、ハンドクリームの材料に使う場合は、目に見えるゴミを取り除く必要があります。巣箱に塗るための蜜蝋は、ゴミがたくさん混じっていても問題はありません。
ゴミを細かく取り除きたい場合や、小さく成型したい場合は、大きな固まりを砕いて、蜜蝋だけを湯煎で溶かします。
溶けた後に、型に流し込みます。型には耐熱性のタッパーなどを使います。ゴミを取り除く場合は、キッチンペーパーなどで液体の状態の蜜蝋をろ過します。
蒸し器による蜜蝋の作り方
最近では、蒸し器を利用して蜜蝋を作る人が増えています。
蜜蝋の融点はおおよそ65度です。サウナのような高温の空間に搾りカスを入れておくと、蜜蝋だけが溶けて絞りカスから落ちてきます。
お湯の中で溶かすよりも、最初からゴミが少ない蜜蝋を作れるのがメリットの1つです。
次の動画では、ダイソーの商品を使って蜜蝋を精製しています。簡単に蜜蝋を作ることができました。
太陽光・ホットプレートを利用した蜜蝋の精製
先ほどの蒸し器と同じ仕組みを使い、太陽光を使って容器の中の温度をあげて蜜蝋を精製する器具が販売されています。
そういった器具は高いので、100円ショップの材料を使って自作してみました。
改善点は多いですが、自作される時の参考になれば嬉しいです。
ただ、太陽光は、天気に左右されてしまうので、週末養蜂ではホットプレートを改良して行っています。
年間数十キロの蜜蝋を作らなければならないため、現在はこの方法で行っています。
加熱しすぎると蜜蝋は発火しますので、温度は必ず一番低くして、加熱中は目を離さないでください。
お湯で溶かすよりも最初から綺麗な蜜蝋ができ、作業も簡単です。
蜜蝋の精製に直火は禁物
蜜蝋の融点は65度程度です。必要以上に温度をあげすぎないようにしましょう。
先ほど書いたように、蜜蝋を精製する際には、蜜蝋の底にかなり小さなゴミが残ります。この小さなゴミを取り除くには、水で蜜蝋を溶かすのではなく、蜜蝋だけを溶かす必要があります。
蜜蝋は溶けると水や油のようにサラサラの液体になるので、ろ紙でろ過すればかなり細かいゴミまで取れます。
湯煎ではなく、鍋に蜜蝋を入れて直火で加熱すると、蜜蝋の温度が高くなり過ぎて、蜜蝋の色が黒っぽく変色してしまいます。
また、目を離したりして長時間火にかけると、煙が出てきて最後には発火します。
蜜蝋は可燃物ですので、くれぐれも扱いに注意してください。変色や発火を防ぐため、蜜蝋を直火で溶かすのはやめましょう。
すぐ蜜蝋を作らない場合は、搾りかすの中でスムシが増殖しないように注意
ハチミツを絞った後にすぐに蜜蝋を作る場合はよいのですが、そうでない場合も多いと思います。
1つの巣箱から採れる蜜蝋はわずかですので、まとめて蜜蝋を作りたくなります。
このとき、常温で搾りかすを保存しておくと、搾りかすの中でスムシがどんどん蜜蝋を食べてしまいます。
採蜜が終わった搾りかすはジップロックなどの袋に入れて密封し、冷凍庫に入れてください。
これで、スムシが蜜蝋を食べてしまうことはありません。
作った蜜蝋は常温での長期保存が可能
蜜蝋の保存方法は、いたって簡単です。
蜜蝋は常温であればほとんど変化しない物質です。冷暗所で保存すれば数年間はまず問題ありません。
ただ、直射日光に当たると、蜜蝋の色が白っぽくなります。このため、常温で、直射日光に当たらない場所で保存しましょう。
長期保存する場合など、心配であれば冷蔵庫に入れてもよいですが、常温で十分保存できます。
蜜蝋の使い方、活用方法
蜜蝋は、その名の通り「ロウ」ですので、蝋燭作りに利用ができます。中世のヨーロッパの教会で利用されていたそうです。また、ハンドクリーム、リップクリームなどの化粧品の材料になり、市販のものでも蜜蝋を使った製品は多くあります。
無垢木材の塗装に使う蜜蝋ワックスや、プラスティック利用削減のために注目されている蜜蝋ラップなど、様々な利用用途があります。