養蜂では、ハチミツだけでなく、巣の原材料の蜜蝋(ミツロウ)を採取できます。蜜蝋は、ニホンミツバチの誘引に広く使われています。
蜜蝋とは
蜜蝋(ミツロウ)とは、ミツバチが巣を作るために体から分泌するロウ(蝋)のことです。働き蜂のお腹にある蝋腺(ろうせん)から分泌され、口で噛んで柔らかくしてから巣の材料にします。
ミツバチの巣は六角形の構造で、少ない材料でたくさんの蜂蜜を貯蔵できる効率的な形になっています。重箱式巣箱で飼育する場合、蜂蜜の 20 分の 1 ぐらいしか蜜蝋は取れません。
融点は約 65℃ で、常温では固体ですがお湯で簡単に溶かすことができます。黄色い色と独特の甘い香りがあり、古代から蝋燭や化粧品に利用されてきた天然素材です。
蜜蝋はニホンミツバチの捕獲に活躍
ニホンミツバチを捕獲するときには、蜜蝋が必要です。蜜蝋を巣箱に塗っておくことで、ニホンミツバチを誘引できると考えられているためです。
ただし、捕獲に使う蜜蝋はニホンミツバチのものでなければなりません。ホームセンターや手作りコスメの材料店で売られているものは、ほとんどがセイヨウミツバチの蜜蝋です。
ニホンミツバチの蜜蝋は非常に貴重で、一般の店舗で手に入れることは困難なため、自分で飼育して蜜蝋を作れるようになることが養蜂の大きなメリットの 1 つです。
蜜蝋の塗り方のコツ
蜜蝋を巣箱に塗るとき、「たくさん塗った方が効果がありそう」と思うかもしれません。しかし実際は逆効果です。蜜蝋をベタベタに厚く塗ると、ニホンミツバチが巣を作るときに邪魔になってしまいます。
蜜蝋は香りを出すことが目的なので、巣箱の天井にうっすらと塗る程度で十分です。木の表面を温めてから蜜蝋をこすりつけると作業しやすくなります。
蜜蝋を使った誘引については次のページで紹介しています。
巣箱に蜜蝋を塗る
ニホンミツバチの捕獲率を上げるには巣箱に蜜蝋を塗ることが効果的です。塗る場所は天井部分でOK。ドライヤーで熱して薄く塗るのがコツ。セイヨウミツバチの蜜蝋では効果がないので注意が必要です。

蜜蝋の精製に必要な道具
蜜蝋作りに特別な道具は必要ありません。家庭にあるもので始められます。
必要な道具:
- 大きめの鍋(蜜蝋専用にする)
- 木綿製の袋またはガーゼ
- ゴミを取り除くための網やザル
- 型にする容器(タッパーや牛乳パックなど)
鍋は一度蜜蝋を溶かすとロウがこびりついて落ちにくくなります。料理用とは別に、100 円ショップなどでも良いので、蜜蝋専用の鍋を用意しましょう。
蜜蝋は搾りかすから取り出す
ニホンミツバチの養蜂では、重箱式巣箱を使うことが一般的です。この巣箱では、遠心分離機のように巣を壊さずにハチミツを採る方法が使えません。巣ごと切り取り、押しつぶしてハチミツを絞り出すため、蜜蝋を含む搾りかすが大量に出ます。重箱式巣箱 1 段分でおよそ 5 キロ余りの蜂蜜が取れますが、そこから得られる搾りかすを精製すると、だいたい 200〜300g 程度の蜜蝋になります。
絞りカスには蜜蝋の他にも様々なものが混ざっていますが、お湯の中に搾りカスを入れると、蜜蝋が溶けて浮き上がってくる性質を利用して、蜜蝋を取り出します。
まず、搾りカスを木綿製の袋などに入れて鍋の中に入れます。鍋に水を入れてお湯を沸かすと、水より比重の低い蜜蝋が溶けて水面に浮いてきます。完全に蜜蝋が溶けたところで火を止めて冷やせば、固まって蜜蝋の板ができます。
搾りカスを袋に入れておくことがポイントです。蜜蝋が溶けるとごみは袋の中に残り、蜜蝋だけ浮いてきます。
なお、蜜蝋の融点は 65℃ 程度ですので、お湯を沸騰させる必要はありません。作業はなるべく屋外で行ってください。
搾りカスをお湯で溶かすと異臭がします。屋内だと臭いが充満してしまいます。袋の中に蜜蝋を入れるのではなく、絞りカスをお湯に入れて、溶けてから網を沈めることで、蜜蝋のみ取り出しています。
1 回だけでゴミを完全に取り除くことは難しいので、この作業を何度か繰り返して、蜜蝋をきれいにします。
蒸し器による蜜蝋の作り方
最近では、蒸し器を利用して蜜蝋を作る人が増えています。蜜蝋の融点はおおよそ 65 度です。サウナのような高温の空間に搾りカスを入れておくと、蜜蝋だけが溶けて絞りカスから落ちてきます。
お湯の中で溶かすよりも、最初からゴミが少ない蜜蝋を作れるのがメリットの 1 つです。
次の動画では、ダイソーの商品を使って蜜蝋を精製しています。簡単に蜜蝋を作ることができました。
太陽光・ホットプレートを利用した蜜蝋の精製
先ほどの蒸し器と同じ仕組みを使い、太陽光を使って容器の中の温度をあげて蜜蝋を精製する器具が販売されています。
そういった器具は高いので、100 円ショップの材料を使って試しに作ってみました。改善点は多いですが、自作される時の参考になれば嬉しいです。
ただ、太陽光は、天気に左右されてしまうので、弊社ではホットプレートを改良して行っています。年間数十キロの蜜蝋を作らなければなりません。
加熱しすぎると蜜蝋は発火しますので、温度は必ず一番低くして、加熱中は目を離さないでください。お湯で溶かすよりも最初から綺麗な蜜蝋ができ、作業も簡単です。
蜜蝋に直火は禁物
蜜蝋の融点は 65 度程度です。必要以上に温度をあげすぎないようにしましょう。
目にみえるゴミを全て取り除くには、蜜蝋だけを湯煎で溶かし、天ぷら油用の濾紙などを使ってろ過するとかなり綺麗になります。
この時、湯煎ではなく、鍋に蜜蝋を入れて直火で加熱すると、蜜蝋の温度が高くなり過ぎて、蜜蝋の色が黒っぽく変色してしまいます。
また、目を離したりして長時間火にかけると、煙が出てきて最後には発火します。蜜蝋は可燃物ですので、くれぐれも扱いに注意してください。変色や発火を防ぐため、蜜蝋を直火で溶かすのはやめましょう。
蜜蝋がこびりついたときの落とし方
蜜蝋が鍋や道具にこびりついてしまった場合は、以下の方法で除去できます。
- 温めて拭き取る - ドライヤーやお湯で温めて、蜜蝋が柔らかくなったところを布で拭き取る
- 削り取る - 冷えて固まった蜜蝋をヘラなどで削る
注意点として、溶けた蜜蝋を水道に流すのは厳禁です。排水管の中で固まり、詰まりの原因になります。
すぐ蜜蝋を作らない場合は、搾りかすの中でスムシが増殖しないように注意
ハチミツを絞った後にすぐに蜜蝋を作る場合はよいのですが、そうでない場合も多いと思います。1 つの巣箱から採れる蜜蝋はわずかですので、まとめて蜜蝋を作りたくなります。
このとき、常温で搾りかすを保存しておくと、搾りかすの中でスムシがどんどん蜜蝋を食べてしまいます。
採蜜が終わった搾りかすはジップロックなどの袋に入れて密封し、冷凍庫に一晩入れてください。これで、スムシが蜜蝋を食べてしまうことはありません。
作った蜜蝋は常温での長期保存が可能
蜜蝋の保存方法は、いたって簡単です。蜜蝋は常温であればほとんど変化しない物質です。冷暗所で保存すれば数年間はまず問題ありません。
ただ、直射日光に当たると、蜜蝋の色が白っぽくなります。このため、常温で、直射日光に当たらない場所で保存しましょう。
長期保存する場合など、心配であれば冷蔵庫に入れてもよいですが、常温で十分保存できます。
蜜蝋の使い方、活用方法
蜜蝋は、その名の通り「ロウ」ですので、蝋燭作りに利用ができます。中世ヨーロッパでは教会用のろうそくの原料として用いられました。ロウソクを作るため、教会では養蜂が行われていたそうです。
また、ハンドクリーム、リップクリームなどの化粧品の材料になり、市販のものでも蜜蝋を使った製品は多くあります。
無垢木材の塗装に使う蜜蝋ワックスや、プラスチック利用削減のために注目されている蜜蝋ラップなど、様々な利用用途があります。
次の動画では蜜蝋ラップ作りに挑戦してみました。
蜜蝋クリームの作り方
蜜蝋を使えば、自家製のハンドクリームやリップクリームを簡単に作れます。
基本の配合:
- 蜜蝋: 2〜3g
- 植物オイル(ホホバオイルなど): 10〜15ml
作り方:
- 耐熱容器に蜜蝋とオイルを入れ、湯煎で溶かす
- 蜜蝋が完全に溶けたら、よくかき混ぜる
- 保存容器に移し、冷めて固まれば完成
作業時間は約 10 分。蜜蝋を増やすと固くなり、減らすと柔らかくなります。
蜜蝋キャンドルの作り方
蜜蝋キャンドルは、パラフィンワックスのキャンドルより燃焼時間が長く、煙も少なめです。火を灯すとほんのり甘い香りが広がります。
作り方:
- 蜜蝋を湯煎で溶かす
- 芯をあらかじめ蜜蝋に浸して乾かしておく(火が付きやすくなる)
- 容器に芯を垂らし、割り箸で固定する
- 溶かした蜜蝋を流し込み、冷えて固まれば完成












