住宅地での養蜂はトラブルにつながります。ニホンミツバチで起こりやすい近所トラブルと防止方法を紹介します。
近所迷惑にならないようにしましょう
住宅地で安易に巣箱を設置し、ご近所トラブルを起こせば、「ミツバチを住宅地で飼育する非常識で迷惑な人」になってしまいます。ニホンミツバチの飼育が原因で、そのような事になることだけは避けてください。
基本的に、住宅地では飼わないでください。家族や隣人が刺されてしまうということは容易に考えられるトラブルです。苦情がくることも多く、条例で住宅地における飼育を禁じている自治体もあります。
その他にも意外なトラブルがあり、住宅が少ない地域でも起こってしまうものもあります。よくあるトラブルと防止方法について紹介しますので、飼育を始める前に必ず確認してください。
このページでは「ご近所トラブル防止」と書いていますが、想定しているのは田舎です。それぞれの家は大きく庭があり、田畑も混在しているような環境を前提としています。
都市部や新興住宅地として開発されたような場所、つまり庭がほとんどなく狭い土地に家が密集しているような環境では、そもそも飼育はできません。
事前に近隣住民へ説明しましょう
トラブルを防ぐ最も効果的な方法は、飼育を始める前に近隣住民に説明し、理解を得ることです。
巣箱を設置する前に隣接する家を訪問し、「ニホンミツバチを飼育したいと考えている」「おとなしい蜂なので刺される心配は少ない」「何かあればすぐに対応する」といった点を丁寧に説明しましょう。
ハチミツが採れたら、近隣の方におすそ分けしてください。「迷惑をかけるかもしれない人」から「ハチミツをくれるありがたい人」に印象が変わることもあります。日頃からの良好な関係が、トラブル防止の最大の鍵です。
飼育届の提出と条例の確認は必須
養蜂を始める前に、飼育届の提出と地域の条例確認は必ず行ってください。 養蜂振興法により、趣味でニホンミツバチを飼育する場合でも都道府県への届出が義務づけられています。
さらに重要なのが、お住まいの地域の条例です。住宅地での飼育を禁止している自治体もあるため、飼育届を提出する際に担当窓口で条例やトラブル事例について確認しましょう。
飼育届を出そう
平成25年に法改正が行われ、ニホンミツバチを趣味で飼育する場合でも原則的に届出が必要になりました。必ず届出を行ってください。

トラブル 1.「怖い」と苦情が来る
「刺されてしまいそうで怖いから、飼育をやめてほしい」というのが最も多い苦情です。ニホンミツバチは基本的には大人しいのですが、寒い冬の季節や、群れが消滅しかけている場合は、ニホンミツバチも攻撃的になります。また、化粧品にニホンミツバチを刺激する物質が入っていることもあります。
普通の人は、刺されても少し腫れる程度ですが、アレルギーを持つ人が稀におり、最悪の場合は死に至ることがあります。決して軽視できません。人の出入りがある場所には、巣箱は設置しないでください。
私たちが飼育する場合にも、巣箱の周囲の住宅が少し多い場所に巣箱を設置すると、苦情が寄せられることがあります。特に、子供がいる方はミツバチの飼育に関して敏感です。「子供が刺されそうで心配」という意見は納得できますので、その場合は他の場所を探してください。
ただ、ニホンミツバチではない別の種類のハチが飛んでいるのを見た方から、「あなたが巣箱を置くから、ハチがたくさん家の周りを飛んで困る」というような的外れな苦情が来ることもあります。このような苦情に対しては、しっかりと説明をして解決してください。
万が一刺されてしまったときの対応
近隣の方がミツバチに刺されてしまった場合に備え、適切な対応を知っておくことが大切です。
刺された場合は、針にはまだ毒袋が付いているため、つまんで押しつぶさないように慎重に取り除き、流水で患部を洗って冷やすことが基本的な応急処置です。
特に注意が必要なのは、血圧低下や意識障害を引き起こすアナフィラキシーショックです。このような症状が現れた場合は、ただちに救急車を呼ぶ必要があります。ご近所への説明時に「もし刺された場合はこう対処してください」と伝えておくと、お互いに安心できます。
トラブル 2. 見落としがちな糞害
洗濯物や車に、黄色い無数のシミがついたようになることがあります。これは、糞害(ふんがい)と呼ばれるものです。ミツバチはきれい好きですが、あくまで巣の中だけです。巣の中では糞をしませんが、巣の外で糞をします。
ミツバチは飛行中に糞をしますので、巣箱の近くの洗濯物や車、住宅の壁などを汚してしまうことがあります。糞害が起こると、黄色い無数のシミがついたように見えます。住宅の密集地では注意してください。私たちは、糞害が発生した場合にはすみやかに巣箱を移動させます。一般にはあまり知られていませんが、最も起こりやすいトラブルです。
この写真の例ではわずかに付いているだけですが、大量に着くと壁一面が汚れることもあります。

糞害はかなり厄介な問題です。まず、被害が発生していても気づきにくいです。知らない間に近所迷惑になっている場合があります。
トラブル 3. 春に分蜂群が飛び回る
「ニホンミツバチが出入りする様子なんて、少し見えにくい所に巣箱を置いておけば見えないし、隣の家の人に内緒で飼育しても大丈夫だろう」なんて思っていないでしょうか。
確かに、普段はニホンミツバチの飛翔はあまり目立ちません。しかし、分蜂(ぶんぽう)のときは、何千匹ものニホンミツバチが飛び回ります。家の中からでも、庭先を飛び回る羽音が聞こえます。
住宅地に巣箱を設置した方から、「分蜂のときにこんなにニホンミツバチが飛び回るとは思わなかった。今日は隣の人がたまたまいなかったのでよかったが、明日も飛び回らないか不安でたまらない。今すぐ巣箱を動かしたい」との相談を受けたこともあります。
分蜂の騒ぎを知らない人が見ると、驚いて市役所などに駆除の依頼をされる可能性もあります。
都市部では分蜂が起こって、ニホンミツバチが飛び回ったり、信号機などにニホンミツバチが集合すると、警察車両が出動したり、ニュースで取り上げられるなどの騒ぎになります。
都市部でなくても、自宅の庭で飼育していた巣箱から、分蜂群が飛び出し、隣の家の軒下に集合してしまうかもしれません。それまでこっそり飼育していて、そのとき初めて隣人が飼育について知ったのであれば、関係が悪化してしまうでしょう。
重箱式巣箱は分蜂を止められない
このサイトでは初心者向けに重箱式巣箱を紹介していますが、この巣箱には分蜂のコントロールが難しいという特性があります。 セイヨウミツバチの飼育で使われる巣枠式巣箱であれば、内部を観察しながら分蜂を防ぐ管理ができます。しかし重箱式巣箱では、巣の内部をそのままにしてミツバチ任せで育てるため、分蜂の時期をある程度予測できても、完全に止めることはできません。
住宅地で飼育する場合、突然数千匹のミツバチが飛び立つリスクは常に存在します。この「いつ起こるか分からない」という不確実性が、住宅地での飼育をおすすめしない理由の一つです。
初心者は決して住宅地では飼育しないこと
ビルの屋上など養蜂を行うプロジェクトでは、プロが行っていたり、プロがアドバイザーとして参加しています。また、それらのプロジェクトのほぼすべてがセイヨウミツバチを利用しており、内部を観察しながら分蜂を防ぐなどして管理されています。
初心者は間違っても住宅地では飼育しないでください。ビルの屋上や住宅地でも安全を確保して飼育するためには高い技術が必要です。少なくとも初心者がやれるものではありません。
一人のマナー違反が養蜂全体に影響する
残念ながら、道路脇や他人の土地に無断で巣箱を置く人、苦情を無視して飼育を続ける人もいます。このような行為は法律違反であるだけでなく、「養蜂をする人は非常識」というイメージを広めてしまいます。
マナーを守らない飼育者が増えれば、将来的に養蜂を制限する新たな法律や条例が作られる可能性もあります。ニホンミツバチの飼育を長く楽しむためにも、一人ひとりが責任ある行動を心がけましょう。















