Q春のスズメバチの巣は、なぜ女王蜂 1 匹で作られているのですか?
その時期はまだ働き蜂が 1 匹もいないからです。越冬から目覚めた女王蜂は、体力を戻してから巣作りを始め、最初の働き蜂が育つまでの約 1 ヶ月間を 1 匹で乗り切らなければなりません。
春、女王蜂は 1 匹で目覚める
秋が終わると、巣にいた働き蜂はすべて死んでしまいます。冬を越すのは、秋に生まれて交尾を済ませた新しい女王蜂だけです。朽ち木の中や土の中にもぐり、たった 1 匹で冬眠します。
春、暖かくなってくると女王蜂は冬眠を終えて動き出します。ただし、すぐに巣を作りはじめるわけではありません。しばらく樹液などをなめて、冬でおとろえた体力を戻します。
体力が戻ってから、女王蜂はようやく巣作りにとりかかります。多くは 5 月ごろからです。
巣作りが始まってからの約 1 ヶ月
ここから、最初の働き蜂が羽化する(さなぎから成虫になって出てくる)までの約 1 ヶ月間が、女王蜂 1 匹だけの期間です。
巣を作る場所を探し、木をかじり取って唾液と混ぜた材料を集め、巣を作り、卵を産み、狩りをして幼虫のための肉団子まで作ります。すべて 1 匹でこなします。
私たちが撮影したのは、ウッドデッキの屋根の下で巣を作っていたコガタスズメバチの女王蜂でした。住宅地でよく見かける種類です。
飛び立ってから 5 分ほどで巣の材料をくわえて戻ってきて、また塗り広げる。これを何度も繰り返していました。
このときの巣は、まだ作りかけの小さな塗り壁でした。そして女王蜂が材料を集めに出ているあいだ、巣には誰も残っていません。 オオスズメバチやキイロスズメバチも、春は同じように女王蜂 1 匹から巣作りを始めます。
多くの巣はここで途絶える
女王蜂が命を落とせば、その巣はそこで終わりです。狩りに出れば自分も襲われますし、巣は留守のあいだ無防備になります。この約 1 ヶ月は、スズメバチにとって 1 年でいちばん危うい期間と考えられます。
私たちが別の場所で観察していた巣も、外壁を作っている途中で女王蜂がいなくなりました。
この時期を乗り越えられた巣だけが、秋の大きな巣になります。
働き蜂が羽化しはじめると、女王蜂が外に出る回数はしだいに減ります。そして働き蜂が数十匹をこえるころ、女王蜂は巣から出るのをやめ、産卵に専念するようになります。
目の前まで近づいても刺してこなかった
撮影のとき、目の前まで近づいてもこの女王蜂は攻撃してきませんでした。巣を守る役割は本来、働き蜂が受けもっています。先ほど見たとおり、その働き蜂がまだ 1 匹もいない時期です。
女王蜂も毒針は持っていますが、働き蜂ほど攻撃的ではなく、1 匹で巣を作っている時期は巣をつついても逃げ去ることがほとんどだと言われています。
ただし素手でつかんだり、追い回したりすれば刺されます。近づくとしても、そっと見るだけにしてください。
撮影したウッドデッキの巣は人がよく通る場所だったため、私たちで駆除しました。巣を作られて困る場所かどうかで判断してください。
巣を撤去したあと、女王蜂がどう動いたかはこちらの動画で見られます。撤去した巣に残っていた卵のその後も記録しています。
ニホンミツバチを飼っている方は、巣箱の近くで春の女王スズメバチを見かけることがあります。ただし働き蜂がいないこの時期は、秋のように集団で巣箱を襲うことはないため、特別な対策は必要ありません。
関連情報
スズメバチの対策
スズメバチの中でも、キイロスズメバチはニホンミツバチの巣箱に頻繁にやってきます。オオスズメバチは世界最大のスズメバチで、ニホンミツバチの群れを全滅させることもあります。
