Qスズメバチの巣にハチミツはありますか?
ありません。スズメバチは群れで冬を越さないため、食料を貯めておく必要がないからです。
巣にあるのは卵と幼虫とサナギだけ
「ハチの巣=ハチミツ」というイメージがあり、視聴者の方からも「巣を壊したら蜜が出てくるのでは」という質問をいただきます。
私たちが切り株の下から掘り出して解体したオオスズメバチの巣にも、蜜のようなものは一滴もありませんでした。
どの層を開けても、入っているのは卵と幼虫とサナギだけです。
日本で見られるハチの中で、花の蜜を濃縮して巣に貯めるのはミツバチだけです。
この動画では、その巣を掘り出して解体し、層ごとに開けて中を確認しています。
冬を越さないから貯める必要がない
ハチミツは、ニホンミツバチが群れごと冬を越すための食料です。
花の蜜を集めて濃縮し、巣の上のほうに貯めておいて、花のない冬にそれを食べて生き延びます。
スズメバチには、その必要がありません。
働き蜂は冬を越すことなく死んでしまいます。
秋に生まれた新しい女王蜂たちは、群れを作らず 1 匹ずつ単独で冬を越します。
春になると、女王蜂はゼロから巣を作り直します。
巣もその年かぎりで、貯めた食料を待っている群れが翌春にいないのです。
日々の食事のしかたも違います。
スズメバチの成虫も樹液や花の蜜をなめます。
ただしそれは自分が飛ぶためのエネルギーで、その場で消費してしまいます。
幼虫に与えるのは、捕まえた昆虫を噛みくだいた肉だんごです。
そして成虫は、そのお返しに幼虫が口から出す栄養液をもらいます。
餌は貯めるものではなく、その日のうちに受け渡すものなのです。
一時的に餌が足りなくなったときは、働き蜂が幼虫を引き抜いて、ほかの幼虫に与えることがあります。
ハチミツを貯めない代わりに、幼虫そのものが非常時の食料になっているのです。
ニホンミツバチの巣との違い
| ニホンミツバチの巣 | スズメバチの巣(解体したオオスズメバチの巣) | |
|---|---|---|
| 巣の材料 | 蜜蝋(体から分泌する) | 木の繊維を噛みくだいて唾液と混ぜた紙 |
| 巣の形と向き | 板状の巣が地面に対して垂直に並ぶ | 円盤が上下に積み重なり、六角形の部屋は下向き |
| 中にあるもの | 下のほうで子育て、上のほうにハチミツ | 卵・幼虫・サナギだけ |
| 冬 | 群れで越冬する(だから食料が要る) | 新女王だけが単独で越冬する |
狙われるのは幼虫とサナギ
では、ハチミツがないスズメバチの巣は外敵から安全なのかというと、そうではありません。
巣の中の幼虫とサナギは、自然界では貴重なタンパク質のかたまりです。
それが大量に、ひとつの場所に蓄えられています。
ハチクマというタカの仲間の渡り鳥は、地面の中にあるオオスズメバチの巣を脚で掘り出します。
そして幼虫やサナギが並んだ巣盤(すばん)ごと持ち帰り、ヒナに与えます。
クマもハチの巣を食べます。イランのツキノワグマの糞を調べた研究では、80 個のうち 30% からオリエントスズメバチが見つかり、ナツメヤシの実に次いで 2 番目に多い食べものでした。 ( 参考: Diet of Asiatic black bear in its westernmost distribution range, southern Iran|Ursus 28(1), 2017 )
日本のツキノワグマも、夏には社会性昆虫、つまりハチやアリのなかまを食べることが知られています。 ( 参考: ツキノワグマの基礎的な生態の理解|環境省 )
ただし、クマが狙っているのは巣の中の幼虫とサナギです。成虫まで食べているかどうかを確かめた資料は、私たちが探したかぎりでは見つかりませんでした。
秋になるとスズメバチが近づくものに激しく反応するようになります。
働き蜂の数が最も多くなる時期であることに加えて、この守っているものが巣の奥にあるからだと考えられます。
関連情報
スズメバチからニホンミツバチの巣箱を守る方法について、詳しくはこちらをご覧ください。
スズメバチの対策
スズメバチの中でも、キイロスズメバチはニホンミツバチの巣箱に頻繁にやってきます。オオスズメバチは世界最大のスズメバチで、ニホンミツバチの群れを全滅させることもあります。
