Qスズメバチの女王蜂をトラップで駆除しないのはなぜですか?
春に女王蜂を捕まえても、秋にニホンミツバチの巣箱を襲いに来るスズメバチはほとんど減らないためです。オオスズメバチを減らすと、かえって別のスズメバチが増える心配もあります。
捕まえても、秋に来る数は減らない
春にペットボトルにジュースなどを入れて吊るしておくと、スズメバチの女王蜂が入ることはよく知られています。実際に、この方法でたくさん捕まえている方もいます。
春先に見かける、体長 4〜5cm ほどある大きなスズメバチ。これが冬を越して 1 匹で巣作りを始めた女王蜂です。
秋の巣で働いていた蜂は冬を越せないため、女王蜂は毎年ゼロから巣を作り直すことになります。
このときの女王蜂は、巣の材料を集めることも、卵を産むことも、幼虫に与える虫を狩ることも、すべて 1 匹でこなさなければなりません。最初の働き蜂が育つまでの約 1 ヶ月間、この状態が続きます。
そのあいだに、餌を探しに出た女王蜂自身が鳥などに襲われることもあれば、留守中の巣が外敵にやられることもあります。幼虫に十分な餌を与えられず、育てきれないこともあります。
そのため、無事に大きな巣まで育てられるのは 100 匹に 1 匹ほどと考えています。
つまり、トラップで捕まえた女王蜂の多くは、放っておいてもその年のうちに命を落としていた個体です。
さらにオオスズメバチは、5km 以上、場合によっては 10km ほど飛ぶとも言われています。自宅にトラップを吊るしても、その範囲の外から飛んでくるスズメバチには届きません。春にトラップを仕掛けている方の巣箱にも、秋になるとスズメバチはやってきます。
一方で、トラップのすぐ近くに巣を作ろうとしていた女王蜂は捕まるので、自宅の周りに巣を作らせたくない場合には意味があると考えています。
オオスズメバチが減ると他の種が増える
トラップに入るのは、オオスズメバチが多いです。
そのオオスズメバチは、秋になると他のスズメバチの巣を集団で襲います。巣を壊して中の幼虫やサナギを引き抜き、自分の巣に持ち帰って餌にするのです。
なかでもキイロスズメバチは、開けた場所にも大きな巣を作るため標的になりやすく、襲われて巣が空になってしまう例も多く報告されています。
人が刺される被害が多いのも、このキイロスズメバチだと言われています。軒下でも屋根裏でも壁の隙間でも巣を作れます。餌にする虫の幅も広いため、人家のすぐそばで数を増やせます。
反対にオオスズメバチは土の中に巣を作るため、コンクリートに覆われた市街地にはあまりいないと言われています。トラップでオオスズメバチを減らしても人の被害が減るとは限らず、キイロスズメバチを抑えていた力のほうが弱まりかねません。
野生のセイヨウミツバチが増える
セイヨウミツバチは、養蜂のために海外から持ち込まれたミツバチです。飼われていた群れが逃げ出して、自然の中に住み着くことがあります。
ただ、その群れが野生で長く続くことはあまりありません。オオスズメバチに襲われてしまうからです。 ニホンミツバチには、集団でオオスズメバチを取り囲み、発熱して蒸し殺す熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)という手段があります。一方のセイヨウミツバチは、この対抗策を持っていません。
オオスズメバチが減れば、野生で生き延びるセイヨウミツバチの群れが出てきます。そうなると、ニホンミツバチと同じ花の蜜を奪い合うことになります。
私たちは、人の被害よりもこちらのほうが影響は大きいと考えています。
スズメバチも生態系の一部です。キイロスズメバチのことも、セイヨウミツバチのことも、数を減らせば良い方に向かうとは限りません。
巣箱は、入り口を狭めれば守れる
そもそも、春の女王蜂を狙わなくてもニホンミツバチの巣箱は守れます。
オオスズメバチは、はじめのうちは巣箱の入り口付近で 1 匹ずつニホンミツバチの働き蜂を捕らえていきます。ところがその周りに、仲間を呼び寄せるにおいを付けていきます。これによって多数の働き蜂が集まり、集団での攻撃に変わっていきます。
たくさんのオオスズメバチが巣箱の中まで入り込むようになると、ニホンミツバチは巣を捨てて別の場所へ移ってしまいます。
そのため、巣箱の入り口を狭めておくことが対策の中心になります。私たちは高さ 7mm にしています。ニホンミツバチは通れて、オオスズメバチは入れない大きさです。
キイロスズメバチのように 1 匹ずつ襲ってくる種は、巣箱の外にいる年老いた蜂を捕まえていくだけなので、群れそのものが弱ることはあまりないと言われています。
そのうえで、実際にオオスズメバチが群れで来るようになったら、巣箱のそばに粘着シートを置きます。1 匹かかると、においにつられて他のオオスズメバチも寄ってくるので、次々と捕まえられます。
私たちがトラップを使わない理由
もう 1 つ、私たち自身の事情もあります。
毎年、敷地のどこかにスズメバチが巣を作らないかと待っているのです。
巣が見つかれば駆除せずにそのまま残し、撮影しながら中の様子を観察しています。
私たちは地域でスズメバチの駆除ボランティアも行っていますが、依頼を受けて出向く巣は、その場で処分することになります。落ち着いて時間をかけて見られるのは、自分たちの敷地にできた巣だけです。
トラップを吊るしてしまうと、その機会がなくなってしまいます。
関連情報
スズメバチの対策
スズメバチの中でも、キイロスズメバチはニホンミツバチの巣箱に頻繁にやってきます。オオスズメバチは世界最大のスズメバチで、ニホンミツバチの群れを全滅させることもあります。
スズメバチの駆除ボランティア
京都府福知山市、綾部市、舞鶴市、京丹波町でスズメバチの巣を無料で駆除します。週末養蜂が地域貢献として実施。LINEからお気軽にご依頼ください。
